建築評論家・五十嵐太郎

先日書いたアルマジロ問題について、建築評論家・五十嵐太郎氏が自身のブログでコメントを書いています。なんか変な含みがあるように感じて、すっきりしない読後感です。何がいいたいのかな? みなさんも読んでみてください。


建築評論家・五十嵐太郎氏のブログ 50’s THUNDERSTORM
http://www.cybermetric.org/50/


みなさんはどう受け止めたでしょうか。
僕は次のように思いました。



◎まず最初に、五十嵐氏が小野弘人氏の設計した住宅について述べた以下のコメント

____新築なのに、すでにリノベーションされたかのような技巧的なデザインに、青木事務所出身らしさを強く感じましたが、この作品は青木さんが審査員長の東京建築士会の住宅建築賞の金賞も獲得しています。(中略)なんでこんな展開にならないといけないのかと残念です。_____

について。

このコメントって、どうしても「小野氏の作品に青木事務所出身らしい技巧を感じた→小野氏は師匠の青木氏から影響を受けている。さらに青木氏は賞まで与えている。お互いさまでお世話になってるでしょ。これくらい我慢しなさい。騒ぐなんて世間知らずじゃない」といっているように感じてしまうのです。


  つまり事なかれ主義っていうか。


そうでなければ、なんで青木事務所らしさを感じたなんてところから書く必要があるのかな。

小野弘人さんの、この荒々しい素材(アスファルト・ルーフ)で覆われた住宅↓
http://pds.exblog.jp/pds/1/200606/15/31/d0074831_1418294.jpg

青木淳さんの作品の、おおらか、あっけらかんとした大あじを特徴としている(とよく言われています)建築↓

http://www.aokijun.com/ja/works/013

とがどう似ているのか、僕にはよくわかりません。みなさんはわかるのかな。
批評家なのに論証なしに、いきなり感じたと書いて、影響があるみたいに書くのは、意図的すぎる感じがしちゃいます。



◎次のコメント、

___後で訴えるくらい愛着のある個人の分身としてのキャラであれば、独立するまで温存すれば良かったようにも思います。___

これは大学の先生が公言するようなセリフでしょうか。だって『カツアゲされたくないくらい大事なものなんだったらさ、そんなもの持って歩くなよ。持ってたほうが悪いんだよ』というアンチャンの台詞みたいに聞こえてしまうよね。


そのあとに五十嵐さんは青木さん側もクレジットを書けば良かったのかもしれないけれど、と書いてから、

「絵本というメディアの形式が影響したのかもしれません。」なんて同情というか、変な弁護をはじめる始末。そして

____実際、これまでに出ている建築家の絵本シリーズをもう一度見ましたが、特定の住宅が扱われていても、担当スタッフの名前は書いていない。やはり担当者の名前を入れないほうが絵本らしいからでしょう。だから、今回の事件は、「絵本」と「建築」が出会うときに起きたズレが一気に噴出したような印象を受ける。____

えー? これって「建築」と「絵本」という異なるジャンルが交差したズレの問題だったの?さっぱりわからない。
念のため本屋に行ってしらべてみたら、同じ絵本シリーズの妹島さんや伊東さんの あとがき には、恊働者やスタッフの名前も謝辞もちゃんと書いてあるじゃない。書いてない青木さんの絵本のほうが例外なんじゃない!
なんで五十嵐さんは、上のような嘘を書いちゃうんでしょう。書かないほうが絵本らしいって、五十嵐さんの絵本らしさってなんなんでしょう。今回の事件は絵本と建築が出会うときに起きたズレなんだって、これももっと説明してほしいな。本をいっぱい出版している五十嵐さんだからこそ、教えてほしいのに。



◎結局いいたいことは、どういうことなんだろ?

五十嵐さんの最後の言葉の中で気になったのは

____「所員から積極的に新しいアイデアをひきだす事務所」があって、現在、うまく機能しているのはこのタイプ____

なんだって 書いてあること。

つまり、せっかくこの方法でうまくいってんだから、この流れに逆行しないでほしかった といいたいのかな。

よくわからない。でも、これって建築界の今の常識なんだし、暗黙の前提だったんだけど、こんどの事件で、やっていけなくなるってことが以下の結論なのはわかる。

____うまく機能している後者のタイプは、今後、映画やアニメの集団制作のような細かい権利規定を所員と結ばないとまずい状況になるのでは。_____

 

でも実際にルールを破ったのはどちらだったんだろ。

少なくとも、五十嵐さんは青木さんがルールを破ったのだとは思ってなくて、ルールが書いてなかったから今度の事件が起こったのだと思っているみたい。

で、五十嵐さんの暗黙の前提は、

「事務所が所員から積極的に新しいアイデアをひきだすー取り出す」ことってことかな。


「ともかく、こうしてせっかくうまくいっていた建築業界に波風がたって残念です。」
という五十嵐さんの事なかれ主義的ななげきを強く感じる文章でした。

僕には、建築評論家である人の文章がなんで、こんな展開にならないといけないのかと残念です。