ルーヴル新館・ランス

chocopie2005-11-30

 久しぶりに本屋に行ったら、先日ルーヴル美術館・新館のコンペを取ったSANAA (妹島和世西沢立衛)の作品集が出ていたので立ち読みした。
ランスに建てられるルーヴル新館のプラン(http://www.nordpasdecalais.fr/louvrelens/intro.htm#)は、広大な敷地に長方形の建物が緩やかにカーブしながら連なって配置されているだけというとてもシンプルなもの。説明文に書かれていたSANAAのコンセプトは以下のようなものだった。


・ ランスの都市の建物や遺構のスケールに合わせた形態
・ 美術館に入る人でなくても自由に行き来することができる、都市に開かれた美術館
・ 反射率の高いアルミをファサードに使い、建物に景観を映らせることによる周囲の環境との融合


 これらのコンセプトに共通するのは建築と都市との一体化という問題設定だけど、これに対するSANAAの解答は、建築のスケールを間延びさせ、フワフワと無重力なものとし、その存在感をぎりぎりまで薄めることによって都市と建築との一体化を目指すというものだ。


 はたして都市はSANAAのプランのように、いくつかのフレームをドテッと並べ、その中をこまごまと区切ったような単純明快な構造なのかな? そんなことないよね。 だって今住んでいる家の周りを見渡しただけでも数えきれないくらいの事物がそれぞれの役割を持ち共存しているのだから。


 建築と都市との一体化ということを考えた場合、このような雑然とした既存の都市をいったん与件として受け止め、それをきちんと整理し、さらに建築をつくることでそれを再構成することが大事なのではないかな? こういうふうに建築をつくることで既存の都市の構造を新たに組み換えることが、かえって建築と都市の一体化を実現できると思うんだけどな。


 SANAAのプランは一見都市の文脈に融合しているように見えるけど、さっきの議論から考えると、都市の複雑な構造を引き受けることを拒絶して開き直っているふうにも見えるよね。だからランスの土地にかみ合っているように見えない。まるでフワフワと当ても無く彷徨う幽霊みたい。